情報確認日:2026年8月1日

今月の最大の論点は、タイのビザ免除滞在が「60日から30日へ短縮される方針」が具体化したことです。ただし、現時点ではまだ施行されていません。終活関係では大きな法改正は確認できませんでしたが、在タイ日本国大使館の死亡・遺骨関係の案内が7月に更新されています。

1|ビザ免除60日から30日への短縮方針

タイ政府は7月16日、現在93の国・地域を対象としている60日間のビザ免除を廃止し、新しい制度へ切り替える内容を承認しました。

新制度案は次の三つです。

  • 59の国・地域:30日間のビザ免除
  • モーリシャス、セーシェル:15日間のビザ免除
  • アゼルバイジャン、ベラルーシ、セルビア:到着時ビザ

ただし、内務省告示はまだ官報掲載待ちで、官報掲載から15日後に施行されます。それまでは現行制度が続き、施行日前に入国した人は、入国時に認められた滞在期限まで滞在できます。タイ政府広報・7月19日

日本の一般旅券が新制度で30日免除対象になる可能性は高いものの、官報による正式な国別一覧は未確認です。したがって、現段階で「日本人はすでに30日になった」と書くのも、「8月も必ず60日」と断定するのも危険です。

移住の下見や住居探しを60日免除前提で計画している場合は、航空券購入時ではなく出発直前に官報・タイ大使館・入管の情報を再確認する必要があります。

2|入国時の資金証明が改めて注意喚起

7月7日、タイ政府は入国時に資金証明を求められる場合があると改めて案内しました。新制度ではなく、以前から存在する規則の再確認です。

案内されている金額は次のとおりです。

  • 一部のビザ免除・通過ビザ:1人1万バーツ、家族2万バーツ
  • 到着時ビザ:1人1万バーツ、家族2万バーツ
  • 観光ビザ:1人2万バーツ、家族4万バーツ
  • ノンイミグラントビザ:1人2万バーツ、家族4万バーツ

ビザ免除については、別の公式案内で「1人2万バーツ、家族4万バーツ」とされている場合もあり、政府自身が案内の違いを認めています。現金だけでなく、相当額を証明する書類が認められる場合もありますが、最終判断は入国審査官です。タイ政府の資金証明案内

実務上は、帰国便または第三国行き航空券、宿泊先、資金証明をすぐ提示できる状態にしておくのが安全です。長期滞在を繰り返している人ほど、「今まで聞かれなかった」は根拠になりません。

3|税制と生活費

7月27日、タイ歳入局は、現在7%となっているVATを2027年9月30日まで延長する方針を発表しました。対象期間は2026年10月1日から2027年9月30日までです。

ただし、7月27日時点では閣議が勅令案の原則を承認した段階です。正式施行には法令公布の確認が必要です。タイ歳入局発表

外国源泉所得、年金、海外送金に関する個人所得税について、7月中に移住者へ直接影響する新しい公式変更は確認できませんでした。タイに年間180日以上滞在する場合の税務居住者判定、海外所得をタイへ持ち込む時期、日本で納税した税額の控除は、引き続き資金の種類と発生年を分けて記録しておく必要があります。

日タイ租税条約を含む個別判断には、タイの税務専門家への確認が必要です。

4|銀行・送金・住宅・医療保険

7月中に、外国人の銀行口座開設条件、外国人の住宅所有、民間医療保険について、全国一律の重要な制度変更は確認できませんでした。

銀行口座については依然として、銀行名だけでなく支店、担当者、保有ビザ、住所証明、取引目的によって判断が分かれます。「このビザなら必ず開設できる」という公式な全国共通ルールは確認できません。

コンドミニアム購入、長期賃貸、医療保険についても制度変更がないから安心という意味ではありません。高齢での移住では、ビザよりも先に次の三点を確認したほうが現実的です。

  • 保険更新可能年齢と既往症の扱い
  • 入院時の保証金とキャッシュレス対応
  • 認知機能や身体機能が低下した後の住居契約・銀行手続きの代理体制

医療・保険契約の個別判断には専門家への確認が必要です。

5|安全面――国境地域は一部緩和

日本外務省は7月2日、カンボジア国境から30~50キロの地域について、危険レベルを3から2へ引き下げました。

一方、国境から30キロ以内は引き続きレベル3の渡航中止勧告です。対象はシーサケート、スリン、ブリラム、ウボンラーチャターニー、サケーオ、チャンタブリー、トラート各県の国境付近です。

停戦後は大規模衝突が減っていますが、重火器の撤去が進んでおらず、偶発的な衝突の可能性は残っています。外務省・タイ危険情報

地方移住候補地を「県名」だけで判断せず、国境からの実際の距離を確認する必要があります。

6|終活――死亡時の手続きが改めて整理された

在タイ日本国大使館の死亡手続き案内は7月15日、証明関係案内は7月17日に更新されています。大きな制度変更というより、現行手続きの確認と考えるのが妥当です。

タイで日本人が死亡した場合の重要点は次のとおりです。

  • 区役所・郡役所発行の死亡登録証を取得する
  • 火葬する場合は、死亡登録証に火葬の事実、寺院名、住所を記載してもらう
  • 大使館へ死亡者の旅券を持参し、失効処理を受ける
  • 遺骨を日本へ持ち帰る場合は、大使館で遺骨証明を申請できる
  • 日本側の死亡届は、死亡を知った日から3か月以内に提出する

遺骨証明は通関上の絶対条件ではありませんが、骨壺の開封を求められる可能性を下げられます。在タイ日本国大使館・死亡時の手続き

7|医療意思表示は相続の遺言と別に作る

タイの国家健康法第12条では、終末期に単に死を引き延ばす医療や苦痛を長引かせる医療を希望しない旨を、リビングウィルとして表明できます。電子版のe-Living Willも用意されています。タイ国家健康委員会事務局

ただし、外国人が旅券番号だけで電子システムを利用できるかは未確認です。

タイ在住の日本人には、電子登録だけに頼らず、タイ語と英語の書面を作り、主治医、配偶者、信頼できる親族が同じ内容を持つ形が現実的です。蘇生措置、人工呼吸器、経管栄養、緩和ケア、治療判断を託す人物を具体的に書いておく必要があります。

これは財産を扱う「遺言」とは別物です。

特に日タイ婚では、タイの不動産・銀行預金・会社持分と、日本に残る資産を一枚の日本語遺言だけで片づけようとすると、死亡後に翻訳、認証、相続人確認で時間がかかります。タイ資産と日本資産を分けて一覧化し、それぞれの国で執行可能な形を検討する必要があります。法的効力や準拠法については、日タイ双方の相続実務に詳しい専門家への確認が必要です。

今月やっておくこと

今月は制度を眺めるより、次の四つを進める価値があります。

  1. 8月以降に入国予定なら、ビザ免除短縮の官報掲載を出発直前に確認する
  2. パスポート、婚姻証明、保険、銀行、資産一覧の保管場所を配偶者と共有する
  3. 相続用の遺言と医療用のリビングウィルを分けて作る
  4. 「死亡したら最初に連絡する人」を日本側とタイ側で一人ずつ決める

タイの終活で一番困るのは、書類がないことだけではありません。書類がどこにあるのか、配偶者が知らないことです。

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